始めるということはいつでも難しい。初まりには過程も展開も含まれるからだ。「そこに言葉があるから」とヨハネ新約聖書風なことを思い出してもいいし、ヘーゲルの「精神現象学」を思い浮かべてもいいのだが、目的というややこしい概念がつきまとうのがなんとも鬱陶しい。言葉は本質的に他者を現前させると言ってしまえば、独白もまた他者の(ための)言葉ということになるのだが。
 とはいっても、もう始めてしまったのだから、俺も観念して「日記」とやらに挑戦してみる。しかし俺は日記と言うものを書いたことがない。高校時代にFirst Kissをした女の子と1年くらい続けた「交換日記」が唯一の日記「みたいなもの」だ。あとひとつだけ加えるとすれば修士論文の準備をしていた時期に、その覚え書きとも、日常の思考ともいえないような「断片」を書き散らかしたことくらいだろう。他者であることと非自我がどうやって目の前の女と一致するのかとかそんなことだ。で、いま書き始めようとしてる「日記」なのだが、これは基本的に他者を前提としている。きっかけは思考とか観念とかいったものとはまったく無関係で、昨年から趣味として自律してしまったオーディオについてあれこれ検索しているうちにたまたまid:mandanaさんの日記に行き当たり、そこに書き込んでいるうちに、書き込みが増えてきてしまったからだ。つまらない書き込みでも答えをいただいたり、responceを返してくれるmandanaさんには本当に感謝しているし、こちらの根が調子よすぎるからかなりご迷惑もかけたと思う。そしてたぶんこれからも。
 そんなわけで、オーディオに関する恐ろしく貧弱で素朴な疑問などを手がかりに、日々の雑感とともに書いていくことにしたわけだ。だから、ここに来てくれる人のためになる「情報」などほとんどないと断言できる。ハンダ鏝など今年になって初めて手にしたようなものだし、機械のシャーシを開けるなど言語道断の破壊行為としか考えていなかった一年前までの俺からすれば、かなり遠くまで来てしまったとは思わないでもないが、実際にアンプの回路をいじったりキットを組み立てたりなど、まだまだ恐ろしくできないというのが正直なところだ。しかし、mandanaさんのところに集まる人たちの書き込みを読みながら、わからないことがあればネットを徘徊している自分、秋葉原に行けばそれまではたんなる界隈性のサンプルとして通り抜けるだけであったガード下の店の商品を、いつか俺も使いたいものだと思っている自分が、そのうちアンプの構造や回路を、自分で簡単なメンテくらいできるくらいには理解したいものだという希望はもっている。そのいちばん大きな障害は、俺は人様に増して腰が重いことと、一般の高校生のアルバイトくらいの小遣いしかないことだが、ま、気長に構えることにしている。
 さて、目の前にある問題は、このblog日記の構成をいくつかに区切ることだ。
まず、当初の目的であるオーディオ関連については、