古本市/ヘルメス3/アラン・レネ

 先日もちょっと書いたが、27日から11月1日まで神保町は古本市が並んでいる。今年は「絶対買わない」という決意のもと、ふつうに通勤すればどうしても古書店街を通らざるを得ないから、わざわざ下車駅をかえて、本屋のない道を通って事務所に行っている。「買わない」というだけなら、指をくわえて歩いていればいいが、頭のなかの収拾が付かなくなるのを避ける意味のほうが大きい。

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 とはいえ、ヤフオクで眼に付いたミッシェル・セールの『翻訳――ヘルメス3』が、競合もなくなんと700円でめでたく落札。定価の5分の1である。古本市よりはるかに安いじゃん。
 一時期下火だった古本市が、このところ、年を追うごとに賑々しくなってきているが、ネット・オークションだのネット古書販売だので、一般読者も古書相場を知ることが容易にできるという危機感のあらわれもあるんじゃないのかな。
ヘルメス〈3〉翻訳 (叢書・ウニベルシタス)

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NHK-BSでアラン・レネの『ヒロシマーわが愛』(邦題:24時間の情事)をやっていたので20年ぶりくらいに観る(それにしても当時の邦題は詐欺みたいなタイトルだよね)。
 「わたしは、君を忘れる。わたしは君を愛の忘却として思い出す」(正確じゃないけど)。このセリフ、若い頃、一度使ってみたいことばだったが、未だに使い道がない。いつか封印を解きたいものである。
 そてにしても、この映画のマルグリット・デュラスの脚本といい。翌年作の『去年マリエンバードで』のアラン・ロブ・グリエの脚本といい、ヌーヴォ・ロマンの作家たちの脚本はほんとうによくできている。ロブ・グリエなんか本業の小説より、映像を前提とした脚本のほうがいいとすらおもう。時間と記憶の重層性なんてテーマは言語よりも映像のほうに向いているということだろう。もちろん、わかりやすさという意味でだが。