ミニコン

 諸事情絡みあって、もともとメモリー不足の脳みそ内でAUDIOに使う神経の容量が極度に不足しているんだが、それでも仕事で音楽は聴かなきゃいけない昨今、自宅から持って来たCDを聴いて、ふと気づいたことがある。
 「ん? このCD、事務所のミニコンのほうがよくきこえるんだけど…」
 フランク:ヴァイオリン・ソナタ
 俺が持っているのはオリジナル・カップリングCDで、こいつはカップリングも、おそらくリマスター異なると思うのだけど、件の曲はフランクのヴァイオリン・ソナタ。デジタル録音初期の1981年、ボベスコが来日した際に新座市民会館で録音されたものである。
 事務所のミニコンONKYOのD77という定価8万円くらいのやつだが、こっちのほうがヴァイオリンの音がグッと迫り出して、楽器本来のざらざらしたタッチがよく再生されるのだ。あまりに違うので、もう一度自宅に持ち帰って聴いてみたが、自宅だとやはりちがう。もちろん、音色やホールトーンや肌理のこまかさなどは圧倒的にこちらのほうがいいのだが、ミニコンで感じられた演奏者の存在感や音の感触が後退してしまう。どういうことなんだろう。
 そういえば、以前いわゆる音楽ギョーカイ人たちと飲む機会が多かったころ、「国内盤はミニコン再生で"いい音"に聴かせるようなマスタリングをしている」という話がまことしやかに流通していた。メーカーのプロデューサーも否定はしなかったから、多かれ少なかれそういうことがあったのだろう。たしかに某レーヴェルの国内プレスなんか聴くと、輸入盤とは明らかに大雑把というかいわゆるドンシャリ傾向の音だった。ひょっとしたら、このCDもマスターを録音する段階からそんな「操作」が加えられていたのかもしれない。
 さすがに最近の録音は、そういったミニコン迎合もしなくなってはいるようだけど、あまりの違いに驚いてしまった。
 うむむ、やはりミニコンも一台置いておくべきだな。