[雑感]たまには仕事の話でも

とはいえ、ベタな仕事の話ではつまらない。「本はだれのために書くのか」という一般論的なことだ。言い換えれば「書きたいこと」と「書くべきこと」の違い。……原稿を書くことに限らずどんな仕事でも、細かいことを気にしだしたり、一度にたくさんのことを片付けようとすると、必ず破綻するし、ミスもでる。こんなことをいうのは、今日印刷所に入稿した本の著者が「あとがき」で、草稿の段階で規定枚数の10倍もの原稿を書いてしまい、書きたかったことの多くを削らなければならなかった、というようなことを書いてきたからだ。「評伝」という書物の性格上ある程度わからないわけではないが、それでも10倍というのは(多少誇張があったにせよ)異常である。書き進めるうちに規定枚数を超えてしまうことなど、俺だってよくあることだが、その途中でこのままいけば何枚くらいの原稿になるかなど、わかるはずだ。それをわかりながら規定の10倍もの原稿を書くなど、自分で調べ上げたことを整理するためのことでしかない。それを無理やり短くすれば、原稿の意図そのものだって曖昧になるし、さらに悪いことにコンテクストの乱れも生じるし、事実関係の不整合だって生まれる。こういう著者は、「書きたいこと」を整理するために原稿を書くのであり、規定枚数で読者に伝えるべきことなど端から考えていないんだよなぁ。つまり、「書くべきこと」がわかっていない、主題が明確になっていないということになる。こういう著者がいるから俺の連休の半分がつぶれるのである。ま、何分の一かは、自戒の念をこめて言うのだが。