jinson DAC TDA1541球ばっふぁ

昨日に引き続き、jinsonさん製作のTDA1541DAC。きょうは1541球バッファだ。同じ1541でも昨日書いたトランスI/Vとはあまりに傾向が違い過ぎて共通点を見いだすほうが難しいので、同じレヴェルでは比較はできない。むしろ1543-4パラや1543球のほうが同じ土俵にのる気がする。以前書いたようにDACによる音の変化はアンプやケーブルを替えたときとは質がまったく異なると思う。DACを替えたらどこがどうなったから幸せ、クォリティがアップして幸せとかいったレヴェルじゃなくて、聞こえてくる音の情報そのものが変化するので評価するのもほんとうに難しい。この過程は、オーケストラの指揮者が同じスコアからまったく別の解釈を導き出して、それをオーケストラにつたえ、オケはその指揮者の指示をプロの音楽家として斟酌することで具体的な音として表現し、その結果が俺たちの耳に聞こえるようになる過程に比すことができると思う。解釈が異なれば当然きこえてくる音楽も異なるし、その解釈の尺度など時代の風潮や解釈者や受容者の主観によって異なるように、DACの音はどれが客観的にいい音なのかなんてだれも言えない。俺からみてクソと思うような録音だってミキサーはそれがいいミキシングだと思ってるわけだしね。って、言い訳くさいな。とにかく、DACの音を言葉にするのは難しいということがいいたい訳だ。今回聴き比べてみて改めてそう思った。相変わらず前置きが長いな、俺は。
で、1541球バッファ。いいです、これは。トランスI/Vに比べて音が前に迫ってくる。演奏者のステージがずいぶん近くなった感じだ。この感じが本来の1541の特徴なんだろうな。1543-4パラや1543球も同じように感じるが、1541球はそれに加えて、中音域がとても充実している。1543-4パラだって充実した中音域を聴かせてくれるのだが、もっと広がりと深さがある。トランス電源によることもあるかもしれないが、フルオケがガンガン鳴っても余裕がある。弦楽四重奏などを聴くと、ヴィオラの深い息づかいに耳を奪われるし、オーケストラの中だと埋もれがちなヴィオラの音がちゃんと存在感を持ってきこえる。オーケストラのヴィオラがちゃんと聞こえるというのはとても大事なことで、ヴィオラは目立たないわりに和声的には重要な役割をしていることが多いのだ。−−情報量そのものは1543-4パラのほうがあるように思うし、レンジもそれに比べるといくぶん狭いかもしれない。しかし、それはないものねだりであって、むしろ足りないものがあるとすれば、トランスI/Vで聴かせてくれた空気感や繊細な音の肌理だと思う。って、それもないものねだりかな。でも、それが加わったら、かなりすごいDACができあがることは間違いない。昨日のやまぐちさんのコメントにあるように、トランスI/Vと球バッファを組み合わせたらどうなるんだろうか。あの空気感と音の肌理がトランスI/Vの特徴なんだとすれば、ぜひともjinsonさんにトライしてほしいな。
クラシックばかりでもなんなんで、ラルフ・タウナーのギターを聴いてみたら、生々しいのなんの。オケものと比べると1543-4パラとの違いは一目瞭然。で、ソロをもっと聴いてみようとバッハの無伴奏チェロ組曲ブラームスのヴィオラ・ソナタを聴いた。やはり、ひとつひとつの楽器が独立したもののほうがDACの特徴ははっきり出るな。ピアノのタッチとヴィオラのボウイウングの見事なことといったら。
そういえば、2つの1541DACはお預かりしたままの状態で、デジフィルがONのままであることに気が付いた。ジャンパピンを外してNOS状態でまた聴き直してみる。