続き

そんなわけで、昨晩は5670(WE396A)PPPアンプの試作機を聴いた。告白すると、パーツも少ないし超軽量だから俺なんかでも作れそうだし、自作して自宅の仕事部屋か寝室用のオーディオを構築するにはちょうどいいなぁ、くらいに思っていたわけだが、これはそんな安易な使い方を拒絶する力強さがある。これはかなり本格的な真空管アンプだよ。電源を入れて15分ほどは寝ぼけた音で、やっぱりこんな小さな真空管だけでPPPを構成するのは無理があるのか、と不遜なことを思ってしまったが、球が熱をもってきたらまったく別物の音になった。配布前のものだから、細かいことは書かないけれど、このチビ球アンプ、大型の直熱管シングルアンプと似た傾向の音がする。これは実際に聴いてみないと、にわかにはだれも信じないと思う。で、俄然本気モードで聴きはじめて、試しに初段をWE396Aに交換してみたら、低音が引き締まるし全域にわたって質感が断然よくなって別次元の音がする。この配布セットを買われる人は、ぜひWE396Aを初段に使ってみることをお勧めしたい。Raytheonの5670に比べればかなりお高い球だけど、絶対にそれだけの価値はあると思う。直熱管に近い音とはいっても、300Bなどとはかなり傾向が違うけれど、この音であれば、たとえば俺の805AAなんかと比べても、小音量で短時間なら区別がつく人は少ないだろう。むしろ低音はこのPPPのほうが量感があるくらいだ。ただ、スピーカによってかなりパフォーマンスに差が出るとは思う。たとえば、いま書いたことはDALI TOWERでの印象だが、樽スピーカだと(とくにオール5670の場合)低域がだぶつき気味になってオーケストラのチェロ・バスの音がうまく前に出てこないなんてこともあるし。――というわけで、かなり俺的には評価は高い。知り合いが設計したという贔屓目だろうとか俺の耳が悪いという人がいれば、そう思ってくれていっこうに構わない。俺が言いたいことは、この安価で小さな真空管アンプが大型直熱管シングルアンプに大きな引けをとらないという一点だし、細かいことは作られた方や聴いた方が判断してもらえばいいのだしね。