AQUAその後

年末から聴きはじめているKhimairaさんのAQUAだが、オーディオ的な視点を排除して純粋にこのDACをとおして出てくる音の性質だけをとって言えば、俺の好みにかなり近い。多くのことは12月30日のblogに書いたので繰り返さないが、エージングも最終段階になってきて、そこで書いた印象はさらに確信にちかいものになっている。よく使われる分類で言えば、アメリカンサウンドとは一線を画すヨーロピアンな趣のある音だ。以前khimairaさんにお会いした際に、自分が目指した音のイメージは雪の平原に広がる冷たい空気感であり、AQUAはその最終形であるということを話されていたが、まさにそういうイメージが自然に伝わってくるような響きだ。このDACシベリウス交響曲などを聴くと、恐いくらいにはまるというと出来過ぎな喩えだが、愛聴盤のいつものやつシベリウス:交響曲第6番オスモ・ヴァンスカ指揮のシベリウス交響曲第6/7番や、シベリウス:交響曲第2番、第3番交響曲第2/3番が、これほど静寂感を伴って聴くことができるのはうれしい。khimairaさんはクラシックをあまり聴かないらしいが、ご本人がAQUAでこれらのCDを聴いたら何と言われるか、ぜひその感想をお聴きしたい(と、さらりとかつ強引に聴かせる展開/笑)。ただ、khimairaさん自身もいっているように、自身の好みの音づくりが優先しているから、万人がこの方向を是とするかどうかはまた別の話だ。実際、AQUAをとおしたは音が前にせり出すのではなく、スピーカの間に音場が浮かび上がって奥行き側に音楽が展開するから、この辺が好みの別れるはずだ。しかし、jinsonさんのトランスI/Vの試作機を聴かせていただいた時にも書いたと思うが、こういう空間的な特徴はトランスI/Vの大きな特質だと思う。つまり、トランスというデバイスのもつ音の特質を徹底的に追い込み、さらにケミコンを排除して反応が早く緻密な音を目指して作られた結果がAQUAというDACなだと思う。ただ、俺も強奏時の低音などはもっと量感があってもいいとも思うが、以前も書いたように弱音時の低音がこれほど聞こえるDACもないのだ。これは非常に悩ましい二律背反かもしれない。
で、I/V変換用に使っているトランスのLundahlのLL1538は(別にコレに限ったことではないが)エージングにかなり時間を要し、音の変化も大きいということをきいていたので、どんな変化か楽しみにしていたが、うちの環境では2段階で比較的顕著な結果が現れた。まず20時間ほどで音に厚みがでて音に実体感が加わった。この時点で低域が少し弱くなったような印象を持ったが、さらにエージングが加わって40時間ほど経過した時点で音の抜けがよくなったために低音もソリッドで深く展開するようになった。じつはまだ変化しているのだが、だいたいどんな方向でエージングされるのかはわかったので、おそらくあと10時間ほどで高域の繊細さにより実体感が加わり帯域のバランスが整うから、全体として今よりもも濃密だが透明感を失わない音になるはずだ。
そうだ、忘れるところだった。完成レポートで、音のでない原因がkhimairaさんのご厚意で付けていただいたレシーバのST490の死亡であると書いたら、なんとid:platycerusさんと以前に夏の視聴会でお会いして以来だったIさんがほぼ同時にST490を送ってくださった。platyecerusさんにはLTC490もいただいている。ほんとにいつもいろんな方に思いがけない頂き物をしているな。こちらからはほとんど何もお返しできないのでほんとうに申し訳ない思いだ。で、いまは標準のSN75179からLTC490に変更しているのだが、全然次元が違う。AQUAの音の傾向は変わらないけれど、音に芯が出て力強さが増した。大げさにいえばアンプを替えたくらいの変化である。もう少し聴いたらLTC490も試してみるつもり。
さらに、khimairaさんのチューンを参考にして、AG/DG間の緑の芋虫(昨年、AQUA製作中に夢に出てきたやつだ/笑)と定電流電源用のFETも変更すべくパーツは調達済み。さらにさらに、これも真似っこしてAQUA用の専用電源のためのトランスも発注してしまった。