Haensler Classicの「バッハ全集」より

作曲された当時の楽器あるいはそのコピーを使って、演奏様式も可能な限り当時のスタイルに準拠しながら新しい解釈を加えるという試みが、いわゆるピリオド・アプローチというやつで、現在の古楽演奏の主流になっている。そこで使われる楽器というのは、18世紀後半から19世紀にかけて改良が加えられた楽器に比べて、楽音としては純度がそれほど高くなく、メカニカルな部分、あるいは楽音に変換される過程で生じるインタフェースがノイズとなってきこえる。もちろんノイズといっても楽音に付随するものなので、聴いていて不快な音というのではない。むしろ古楽器の演奏者や解釈者はこの部分をかなり意識して演奏したり、音楽学的・美学的解釈をする。なので、必然的に古楽器の演奏にはけっこういい録音が多い。というか、そもそも録音技術が未熟だったころに古楽器のニュアンスを音盤に求めるのは無理だったわけで、録音技術の進歩と古楽器ブームは同じ木の枝から派生しているといってもいい(第一次古楽器ブームはLPの普及期とほぼ同時期だし、デジタル録音の普及に呼応するように現在の古楽器ブームがある…ムーヴメントでなくあくまでブームである)。――そんなわけで、オーディオマニアの中には、クラシックは古楽器しか聴かないなんて偏った種族が生まれたりする。
というのが前置きで、表題のテーマになるのだが時間切れ(続く)