Headphone

たいていの使用機材については書いてきたが、ひとつだけ触れていないものがある。ヘッドフォンだ。ヘッドフォンの音場感が好きでないということは書いた記憶があるが、好きでないがために、ほとんど出番がないので書く必然性がなかった。とにかく、真横から中心部に向けて展開する音の定位の仕方が気持ち悪いのである。最悪なのはピアノ・ソロ。楽器のボディと反響版の間に頭を突っ込んでるかようにしかきこえない。しかし、ヘッドフォンがないわけではない。3DKの集合住宅に住んでいた頃に、家族や隣人の手前、充分な音量で聴くことができず、ちょっとした書き物をするときなどに不都合なので買ったのがこれ。

STAXのLambda Nova CLASSIC+SRM-3、94年の製品である。オーディオなんて「想像力の省エネ」くらいにしか思っていなかった当時としては、思いきった買い物であった。SENNHEISERという選択肢もあったが、ドイツ国内の販売価格を知っていたのでバカらしくて敬遠した(国内価格の1/3ほどだったはずだ)。STAXコンデンサ型の自然な音づくりも好ましかったし、音場感がほかに比べてまだ自然であったためでもある。
なんで突然ヘッドフォンの話など始めたかというと、ヘッドフォンを使えばDACの音の比較がもっと楽にできるじゃないかということに、つい最近になって気がついたのである。ほんとうにバカみたいな話である。DACをつなぎ替えて、いちいちスピーカの真ん中に移動しなくたって、ヘッドフォンを使えばその場で比較できるという、そんな簡単なことになんで気がつかなかったのだろう。コロンブスの卵といえばきこえはいいが、そんな盲点的発想ではなく、ただの粗忽話で自分でもあきれてしまう。よほどヘッドフォンが嫌いなんだろとか、ドライバー・ユニットを経由するからそれが盲点だったなどというのは、体のいい言い訳である。
とはいえ、はやりスピーカ経由で感じる音の違いのほうがヘッドフォンで感じる音の違いよりもさまざまな面で確かな気がするのであるが。