家庭内パワーゲーム

 子どもも大きくなってきたことで、親父だけがリビングでいい音で音楽を聴いていることに疑問をいだき、オレも「24」のDVDをテレビモニタからの音ではなく、臨場感のある音で観たいという要求をしても、それがシステム的に可能であり、それを要求することも当然の権利であるということに気づいたらしい。
 そりゃ簡単にできる。問題はテレビごときにまわすアンプもスピーカもないということだ。いくら複数の球アンプがあるとはいえ、テレビの劣悪な音声信号を増幅するために使うことにはかなり抵抗もある。が、こういう家庭内の問題については多くの親父族同様、発言権がかなり低くなってきている現状では、抵抗するための説得材料があまりに少ない。お蔵入りしているSANSUIのプリメイン(AU-α607)をテレビ用に復活させるというアイデアは、じゃあそれどこに置くの?という奥様の発言の前に沈黙せざるを得ない。このまま無言の抵抗を続けていけば、そのうち「どうせなら、サラウンドにしたい」なんて共同戦線を組まれ、そのためにいまあるシステムをスペース的に整理せざるを得なくなるのは時間の問題になってきてしまう。ここはある程度、敵の要求を受け入れるのが得策と判断し、いちばん出番の少ないTU-873LEをテレビ用に接続し、樽スピーカで鳴らすという苦肉の策を講じた。
 というわけで、一昨日から、うちのリビングではテレビをモニタするために300Bシングルと極上桜材エンクロジャーのフルレンジが稼動することになった。300Bがほのかに青みがかった硬質な光を放つ傍では、今晩もキーファー・サザーランドがピストルをぶっ放し、音のエッセンスを凝縮した音の小箱からは、爆弾の炸裂音が発せられることだろう。
 という俺も、昨晩は今週から深夜に放送しているSeason4を敵と同じシステムで観てしまったし、おそらく今晩も観てしまうわけだが。