読んではいけない本のバックナンバーを買った

 昼食の帰り道、古書センターのワゴンセールで『エピステーメー』(朝日出版:1975-79)のバックナンバーが並んでいた。俺が知っている限り最低価格は当時の定価と同じ800円で、1050〜1300円というのが一般的な相場、特集によっては1500円以上する。目にすればいつも強烈なノスタルジーを感じはするものの、買っても読む機会はあまりなさそうなので、当時買わなかった特集のバックナンバーも手にとって眺めるだけだった。
 しかし、それがほとんど読まれた形跡のない美本で200円均一なんである。それも、俺が当時買い揃えたポスト構造主義、エピステモロジー系以外のものが中心。財布を持って出なかったので、ポケットに突っ込んでいた金をはたいて6冊ゲット。
 こういうものは、じつは読む読まないはあまり関係ない。もちろんいくつかの論考はちゃんと読むだろうが、青臭い言い方をすれば「青春時代の記憶」を買うみたいなものだ。あるいは、音楽でいえば、あまり聴かないフルトヴェングラートスカニーニなんかの昔聴いたLPを歴史的記録ゆえにCDで買いなおしたりするようなものだ。

 ところで『エピステーメー』刊行時期と俺が学部の学生だった時期とはけっこう重なるのであるが、俺の大学の哲学科の教授連中はけっこう保守的な傾向が強かったので、こういうポスト構造主義系の雑誌は「読んではいけないもの」のような暗黙の了解があった。『現代思想』だって読んでいていい顔をされなかった。「そんな雑誌読む前に古典を読め」と直接いわれたこともあるしな。ま、わからないことはなかったが、哲学や現代思想をある種のファッションとして身に着けた第一世代の俺たちにとっては必須アイテムみたいなところがあったわけだ。

 なんてことを、書いていたら、BSでアーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの来日公演(モーツァルトの《レクイエム》)やってるじゃないの。
 クソ! ビデオ撮るの忘れた! 再放送を期待。