戯言:内向的スパイラル

 新刊本屋にあまり行かないのは、欲しい本ばかりが増えてしまい、収拾がつかなくなるから。
 音楽雑誌を買わないのは、行きたいコンサートや欲しいCDばかりが増えるうえに、人の書いたレビューを読んで聴いた気になるのがイヤだから。
 コンサートにあまり行かないのは、行けばもっと行きたくなるし、聴かなかったコンサートへの悔恨が生まれるから。それに、それれだけの時間も金もないから。
 CDをあまり買わないのは、買えばもっと欲しくなるから。
 クラシック以外の音楽をあまり聴かないのは、聴けばせっかく捨ててきたものをもっと聴きたくなるから。
 美術館にあまり行かないのは、観ればせっかく離れたジャンルにもっとのめりこんでしまうから。
 仕事をあまりしないのは、仕事をすればするほど時間と収入のバランスの不均衡が拡大するから。

 つまり、情報を遮断することでなんとかやってるんだよな。これはかなり不健康なことである。じっくり物事を系統立てて考えることも、情報を整理することもままならない状態。しかもこの両者は片方だけでは成り立たないし、成り立たせるべきでもない。情報だけならネットを徘徊すれば得られるが、どうも活字にならないと情報にリアリティが感じられないには旧世代の人類である証であるな。
 
 というわけで、必ず行こうとおもっていたボストリッジの来日公演が終わってしまってから公演情報を手にすることになって、地団駄を踏んだりするわけだ。
 おまけに、録画したはずの「冬の旅」の映像が見当たらない。

 こういう情報縮小スパイラル状態から脱却するためにも、早く事務所の仕事から自由になりたいわけだ。
 土曜にレクチャーの内容も、まだぜんぜん考えてない。