届くことのないビデオテープー実相寺昭雄さんのこと

http://www.nikkei.co.jp/news/okuyami/20061130AS1G3000T30112006.html

 ウルトラ・シリーズの演出でわれらが少年時代の記憶に焼きついた演出家・映画監督、実相寺昭雄さんが亡くなった。昨年末に内輪の酒宴の席でごいっしょしたのが最後だった。
 ウルトラ・シリーズの制作の裏話、円谷英二監督の話、そのとき手かけていたモーツァルトの《魔笛》の演出の話など、いろいろと思い出すことはあるのだけど、時間が経過するにつれて記憶の羊水にことばが沈んでいく。
 6,7年前のウルトラマン・ティガ(だったかな)を実相寺さんが一話だけ手がけたことがあって、それが見たいがために会社を早く引けてかじりつくように見たこと、そしてその演出の俺なりの理解をその席で話したら、たいそうお喜びになって、マスタービデオからダビングをしていただけることになっていたのだが、俺の手元に届く前に亡くなってしまった。
 いま、事務所と自宅の書斎には実相寺さんの色紙が飾られているが、それを見るたびに、ウルトラセブンがやってくることを夢見続けて大人になった少年のように、届くことのないビデオテープを、待ち続けるのだろう。

 明日、お通夜に行ってくる。