脱出口

20世紀ドイツの哲学者エルンスト・ブロッホは「希望の反対は絶望ではなく、記憶である」と言った(『希望の原理』)。好きな言葉だ。記憶が邪魔をして出口を見出せない状態が人を不幸にする場面はいたるところにある。「あれかこれか」からの出口は、想起しつつ記憶を拒否し続けることことだ。
♪としをとるのはステキなことです。そうじゃないですか 忘れっぽいのはステキなことです。そうじゃないですか 悲しい記憶の数ばかり 飽和の量より増えたなら 忘れるよりほかないじゃありませんか♪(中島みゆき『傾斜』)
いいなあこの歌。ちなみにこの歌詞、立教大学の現代国語の入試問題に出題されたことがある。ま、鎌田東二がこの歌詞をコメントした文章が主文ではあるのだが。
というわけで、俺もしばらく、目の前にあるSA-8の記憶をブロッホ風に拒絶し続けてみることにした。感覚的に存在してるものを意図的に拒絶するわけだから、白魔術みたいなものだ。
前置きが長くなってしまったが、id:mandanaさんにちょっと背中を押されたこともあり、あれこれパワーアンプの物色をはじめてみた。まずは、mandanaさん推奨のSV501SE(キット9.8万)。「明晰で峻厳な音」という言葉にグラっときた。バルトークの音楽のようだ。次は、id:platycerusさんが最強のピンケーブルといっていたDSR-1.0のメーカーDECWAREのSE84CS($748、キット$646)。能書きどおりだとしたらとんでもなくいい音がするんだろうな。なにせ1万㌦のアンプもかなわないというんだから(笑)。そして、HiFi通で扱っているKuansの300Bモノブロック。価格と音は不明だが、この形がむやみに物欲を刺激する。あとは、mandanaさんがご自身でお使いの「Ellaを使ってみては」と、なんともありがたいことを言ってくださったけれど、いくらサブとはいえ現役のアンプではさすがにこちらも恐縮してしまう。正直言うと、聴いてみたいのは山々なんだけど(笑)。SE84CSはキットを買えば送料を含めてSV501SEと同じくらいかな。この両者はキットであることがポイントでもある。球アンプを組み立てる作業から得られるものは多いはずだ。俺のような初心者が組み立てられるかどうかは、この際、不問に伏す(笑)。Kuansは無理としても、SV501SEと国内販売もしているSE84CSは、ぜひ音を聴いてみたいものだ。「明晰で峻厳な音」と「一万㌦超の音」の対決!
しかし、最近サイドビジネスしてないから、実際に買えるようになるのは少し先だな。それまで、記憶とのたたかいである。