MC805-AA(本編)

805-AAをさまざまな音源を聴いてチェックしているが、これはほんとにすごいアンプなのではないだろうか。俺が所有したアンプなんてたかが知れているし、あれこれ聴き歩いているわけでもないが、オーディオに興味をもち始めてから聴いてきたアンプに限ってみても――ARCAMのA80(税込:141,000)、KMQ60(used:約10万)、counterpoint/SA-8(発売当時$2395)――、どのチェック要素をとってもこの$800代のアンプの比ではないのである。805真空管はmandanaさんがオリジナルの中国製のものからRCAの物に替えられていたということを差し引いてもだ。回路については3極管・直結シングルのA級作動のアンプであるという以外わからないのが、知識不足の俺としては悲しいところだが、とりあえず音について整理してみる。
まず、音色は独特の艶っぽさがあるが、それが必要以上にふくらみをもったりウォームになったりしないのがいい。初めに聴いたときの高域の癖のようなものは、ケーブルをcardasのHexlinc-5CからCamelotのPM600に替えてみたらスッキリしてまったく気にならなくなった。この交換は正解である。低音も深く沈むし締まりがある。SA-8と比べると力強さは幾分後退するが、そのぶん制御も自然で、核となる深い低音に倍音や残響がうまく乗っているようだ。このあたりがMOS-FETとの違いだろうか。うちのスピーカはかなり間隔をとってセッティングしているために、下手をすると真ん中の音場が崩れてスカスカになるが、それもまったくなく奥行側の広がりも充分で奥のほうの楽器の定位もぴったりと決まっているのが気持ちいい。ジャンルで判断すると、このアンプはジャスよりもクラシック、それもオーケストラがすばらしい。ジャズが悪いと言うのではない。フルオーケストラがあまりにすばらしいのだ。たとえばフルオケがffで鳴らしていても、ヴィオラなどの中声部やファゴットなどの聴き取りづらい音の動きが手にとるようにわかるのだ。昨日も書いた「生っぽさ」ということで言えば、とくに管楽器の再現性には驚いた。金管楽器とくにテューバトロンボーンの音がこれほど生々しく響くのは鳥肌もんだし、それらがユニゾンしていてもちゃんと別の楽器に聞こえる。さらに金管木管がフルオケの中で吹いていても、そのそれぞれが団子にならず個々の楽器として聞こえる。これは木管楽器出身の俺としては涙ものである。演奏者の息遣いによる音の輪郭の違いなんかもうまく表現してくれる。つまり「生音」の重要な要素であるところの「肌理」が空間表現の確かさと相まって、なんともいえない心地よさなのだ。プロの演奏家が300Bとか845とかの球アンプを聴いているのがわかった気がする。
しかし、こういう「印象」を書き過ぎるとどんどんウソっぽくなるので、このくらいにしておく。とにかく、巨大出力管アンプの実力にすっかり打ちのめされているんである。というわけで、わが家に収まったMC805-AAの写真(ちょっと大きすぎたな)。もちろん、ベースはオーディオボード"GOBAN”である。GOBANの脚の間にぴったり収まっているのは菅野製の昇圧トランス。トランスの有無で音の違いを試しているところだが、まだ結論は出ていない。