貴重な体験

事務所と自宅の往復の毎日だと、自分のところの音が他の人の音と比べてどうなのかとか、どのあたりの座標軸に位置する音なのかといったことがわからなくなることがある。秋葉原なんて事務所から15分もあれば行けるのだが、何かよほど目的がないと店の開店時間内に足を向けることもできないから、聴き歩きをすることもほとんどない。そういった意味で、805AAアンプを引き取りにmandanaさんのところにお邪魔できたのは、とても貴重な経験だった。
ご自宅で仕事をされることも多いせいもあるだろうが、専用の仕事部屋兼リスニングルームというのは、まさに牙城といった感じでうらやましい。mandanaさんはnOrh Classic 7.0をSunvalleyのSV-2+Counterpoint/SA-3で鳴らすというメインを組まれている。その音を聴いてまず惹かれるのはnOrh Classic 7.0の引き締まった無駄のない響きとディテールの質感だ。ScanSpeakのユニットの特性をうまく活かしているというお話だったが、まさにそのとおりで余分な演出がない。ヴァイオリンのボウイングノイズや打楽器のアタック音など驚くほどリアルだ。同じリアルという言葉でも、うちのDALIなどとは目指す響きが違っている。DALIが響きのリアルさであるならばnOrhは音の質感のリアルさといえるかもしれない。こういう音も好きだなぁ。SV-2のほうは残念ながらコメントできるだけの経験知がないのだが、ただ、MC805AAに比べてニュートラルで端正な響きというかうまく制御された音という印象を受けたが、本当のところはどうなのだろう。
mandanaさんのところでは南実のスーパートゥイーターも付けられているが、STWを聴くのは初めてなのでわがままを言ってSTの有無で比較させていただいたが、STW付きのほうが音の空気感というか楽器が音を出す瞬間の質感がよく伝わってくる。mandanaさんのSTWは中国製で4万以上する製品だからもともとかなり性能が高いものだが、俺も欲しくなってしまった。
というわけで、短時間ではあったが、そのほかSACDや、サブでお使いのElla+樽スピーカも聞かせていただいたり等、本当にいい経験だった。オーディオはそれを使っている人の鏡でもあるが、さすがに経験豊富な方だけに目指す方向がはっきりされているのがすばらしいと思う。しかし、人は同じ経験であっても、当人が知りたい情報しか知りえないのと同じように、同じ音を聴いても聴きたい音しか聴いていないかもしれないから、俺の受けた印象がmandanaさんの目指しているものと違う可能性は充分にあるのだけれど。