NS-2は面白い

このことろ仕事が忙しかったり、大学の指導教授の一人だった先生が亡くなったりと公私ともども慌しくて、あまりじっくり音楽を聴く状態ではないので、TU873LEも箱を開けて組み立て説明書を眺めただけだったりする。この組み立て説明書は面白いね。体裁から構成に至るまで、おまけに総ルビであることも含めて、いま子どもが作っているフェラーリだのポルシェだのいったクルマのプラモデルとまったくいっしょ。思わず、昔つくったプラモデルを思い出してしまった。こりゃ、まったく大人のおもちゃだね、いい意味でだが。こういうキットが真空管アンプの底辺を広げていることは、喜ばしいことではある。なんて、達観したことを言う前に、実際に俺が失敗せずに完成させることができるかのほうが問題だったりするわけだが。
そんなわけで、前日仕入れたNS-2も、じっくり聴きこむのにずいぶん時間がかかってしまった。結論から言って、これは面白いよ。前段からの流れからいうと、音場という抽象的な対象をいじくる大人のおもちゃみたいなもので、充分あそべる。というと考案・製作者には失礼かもしれないが、システムの基本性能や潜在力(クオリティ)にかかわる部分の話ではないから面白いのだ。NS-2のエンハンサ・レヴェルを上げて聴いてみると、ヘッドホンの音場感が嫌いな俺には、まるでヘッドホンの音場を目の前にして聴いているようで、なんともいえない違和感があったのだが、レヴェルを低めに設定すると、なるほど、木管楽器の第1奏者と第2奏者の位置関係やチェロとコントラバスの微妙な位置関係も、点音源としてではなく方向性の問題としてはっきりわかるし、全体の音場感もコンサート会場の雰囲気を程よく伝えてくれる。ふ〜ん、スピーカのクロストークを調整するだけでずいぶん変わるもんだ。これで基本システムが送料込みで10,800円なら安すぎるくらいだ(おれはいくつかカスタマイズしてもらったのでもう少し高かったが)。
ただ、これはスピーカのセッティング状態などでかなり効果が異なると思うし、こういった音場を嫌いな人もいるかもしれないから、万人に薦められるものではないが、クラシックの音場感を自分なりに整えようとするには、少なくともグラフィック・イコライザなんか使うよりはよほど面白いし、効果は高いとだけは断言できる。さっき、樽スピーカの製作者であるペンション・オーナーのMさんのページを見たら、同じくNS-2を買われたみたいで、高く評価していた。でも、こういう本筋から外れたものは、ピュア・オーディオ・マニアには受け入れられないだろうな。