7581Aと350B(続き)

というわけで、現在TU-873LEは俺の教材になりきっていて音楽を聴く状態ではない。ところで、樽スピーカは873LEにつないでいるので、アンプが使えないことで樽スピーカも出番がないのはある程度の必然だけど、面白いことに、樽スピーカが鳴りを潜めて以来まったくjazzを聴かなくなってしまった。逆に言えば、樽じゃないとクラシック意外聴かないということだ。そんなわけで、最近はMC805AA+Royal Towerというメイン・システムでクラシックばかり聴くという樽スピーカ導入以前に戻った感じだ。――で、ドライバ管をSylvaniaの6L6GCからPhilips/ECGの7581Aにした805AAだが、これがすごくいい。以前TU-873LEを組み立てたときに書いたように、805AAは楽器の質感だけはどうしても300BのTU-873LEに勝てなかったのだが、7581Aを挿したことによって805AA本来の伸びのある屈託のない響きに弾力が加わり、楽器の質感が見事に再現されたのだ。これには本当に驚いた。ピアノの金属弦の響きや高音域のタッチといったこれまで弱かった部分が、逆にそれこそが強みであるほどの変貌ぶりで、アファナシェフの弾く『展覧会の絵』〜第2曲「グノームス」、第10曲「サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」なんて聴いていて本当に涙が出てきた。あと特筆すべきは木管楽器。フルートやクラリネットなんか、ただ音が丸いというのではなく、音が丸い筒から出ているのがはっきり聴き取れる。これには2度びっくり。音の輪郭も立ちすぎず緩すぎず、音楽の表情の変化の捕らえかたも鮮やかだし、静寂感もある。解像度とかS/Nとかいった物理的な数値の問題ではなく、音楽を聴いているときの聴覚上の豊かな静寂感だ。ゆえに音楽がとても奥行きをもって聞こえるし響きも深い。ちょっと、これを聴いたらほかのドライバ管には替えられそうもない。――7581Aを聴いたあとでは、同じドライバ管を350Bに挿し替えてもぱっとしない。350Bはかなり期待して買ったのだが。7581Aと比べるとかなり重心が上のほうに移った感じだ。音も軽めで独特の浮遊感がある。じつは、あまりに7581Aがすばらしいので350Bはまだそれほど聞き込んでいないので、それ以上のことはまだ言えないが、何かありそうな予感はするので、そろそろ本格的に聴いてみる。