アンプ2題、あるいは左側に気をつけろ

先週末に5670(WE396A)PPPアンプのパーツを仕入れ、基板を組んでLucyさんの試作機の基板と入れ替えて音出しに臨んだのはいいが、左チェンネルの音が出ずにこの5日間ずっと悩んでいる。現状ではプレート電圧とカソード電圧は左右ともちゃんと出ているので、家電製品のマニュアルによくある「電源は入っていますか」的な、なにかひじょうに基本的なところがすっぽり抜けているような気がするのだが、未だに問題は解決していない――じつは、当初は音の出ている右チャンネルのリップルフィルター後の電圧が規定値を大幅に上回っていたのだが、これは抵抗の付け間違いによるものだった――。左がでないことについては「段間コンデンサ初期不良かもしれない」というLucyさんの指摘で、コンデンサをパラってみたがやはりダメだ。毎晩、帰宅後に基板を取り出してはあれこれチェックしていたが、糸口が見いだせず、じっと基板を眺めては時折、換気扇の下に行ってタバコに火をつける、という末期症状の繰り返しに至ってしまった。昨晩はさすがに万策つきて早々にふて寝したのだが、寝付けないので、ゴソゴソと起き出して、もう1台、問題を抱えたままになっているTU-873LEの開腹手術に取りかかった。そのためのパーツは既に手に入れている。
TU-873LEのハムの原因は「ハムバランサ抵抗を交換したことによる300Bのカソード電圧の変化」説と、同じアンプのハムで悩まれたというaquarius_407258さん10月24日のコメントでいただいた「リップルフィルタのFETショート」説があったが、前者は基板からリード線を引っ張って可変抵抗を取り付けるという透析手術のような作業なので、まずはパーツ交換ですむ後者を試してみることにした。この選択は正解でハムは治まった(aquarius_407258さん、ありがとうございました。読まれてますか?)。PPPアンプはお手上げでも、こちらの方のトラブルが解消したことで少々気を取り直し、300Bのセメント抵抗をメタルクラッドに付け替えて眠りに就いた。と、ここまではよかった。――日中、久々に300Bの音でもじっくり聴こうとしたのだが、FETを交換した後では確かに出ていた「左チャンネルの音が出ない!」。また左かよ! 球に触れると左チェンネルの球だけマイクロフォニック現象が出る。再び開腹。テスターが直流を交流で計ったときのような異常なデジタル表示で、電源部からの電流が迷走状態である。これはLEDFETを取り付けた時にもあったが、シャーシに電源基板を固定したらおさまったので、おそらく問題はアースだ。でも、こんな迷走状態の電流で右だけでも音が出るのはおかしくないか? 開腹しているうちに別の問題が発生したか、とあれこれチェックしている右掌がふとシャーシの角に触れた瞬間450Vの高圧が右半身を駆け抜けた。タンパク質の焼ける臭いと白いやけどの跡が点のように残った。電流値がどれくらいかは分からないがさすがに450Vはきついな。完全な漏電状態である。――災難はさらに続く。感電にめげず続けた作業の途中で誤って抵抗値に設定したままシャーシ電圧との電圧差を計ってしまったため、パチッという音をたててテスターが逝ってしまった。。……終わったな…。案の定ヒューズも飛んだ。FETもまた逝ったかもしれない。なんか、問題を大きくしただけではないのか? 脱力感……。
「左チャンネルに気をつけろ」どころじゃなく、「呪われた左チャンネル」といいたくなるようなトラブルが続くが、それよりも、俺はやっぱり工作には向いてないのじゃないかと、芽生えてきた工作の楽しみや意欲が萎えてしまいそうだ。
いや、ダメだダメだ! 明日、時間を見つけてテスターの買い出しだ!