aquaやっと音出し!

昨晩ようやっとaquaの音を聴いた。音が出なかった原因はレシーバーのST490Aの死亡だった。そもそも、ST490AのDIPは俺みたいなド素人が簡単に手に入る代物ではない。これはkhimairaさんのまったくのご好意で基板といっしょに送っていただいたものである。khimairaさんが自身のblogでも書かれているように、取り寄せたロットの9割以上が使い物にならない代物だったなかから選別された貴重な使用可能パーツのひとつである。俺の基板の症状からST490Aに問題があるかもしれないと、これもご親切にkhimairaさんが標準で付属するはずだったSN75179をわざわざ送ってくださったのである。もちろん、チェック済みのST490Aを付属してくださったわけだから、俺が本来ならばしてはならない(とあとで教わった)ICの通電チェックをした際に過電流がかかって死亡させた可能性のほうが高いわけだが(一度電源をショートさせてるし)…。というわけで、ST490Aを送っていただいたSN75179に交換したら、めでたく音が出たのである。本来ならばもっと早く音出しさせて、視聴記を報告しなければならなかったのだが(そのためにご自身も使われているST490Aを付属していただいたはずなのだが)、ずいぶん歯がゆい思いをおかけしてしまった。じつは、音出し直後はハムに悩んだのだが、これも初歩的な知識の欠如で、DAC基板とトランス基板のアース電圧を一定にしないことによるものだった。これは1本のスペーサを両基板に共有させることで対処した。
で、まだ音出しできてから6時間ほどでエージングも進んでいない状態だが、とりあえず初期段階の印象。試聴用に使った主なCDは、①いつものヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団によるシベリウス交響曲第2番asin:B00005FAE7②スクロヴァチェフスキー指揮ザールブリュッケン放送交響楽団によるブルックナー交響曲第7番asin:B0000ABBND、それに③カルミナ四重奏団によるドビュッシーラヴェル弦楽四重奏曲asin:B00008BDDK
まず一聴して、音に透明感がある。それに加え空間再現性がすばらしい。とくに奥行き側に深く音楽が展開する。そのために、ことさら音が太いとか音像が前にせり出してくるということはないが、音楽が深く呼吸しスケールがとても大きく聞こえる。こういう音の広がり方は好きだな。その点はどこかcounterpointのプリの音に共通するような気がする。また、音の粒子が細かいので、弦楽器や木管楽器のトリルなどの動きがグチャグチャにならず一音一音ずつはっきり聞こえるし、後ろで鳴っている楽器の細かい動きや内声部の和音なども塊にならず、楽譜に書いてある通りのことがちゃんと聞こえる。ライブのコンサートホールの空気感と距離感が音の透明性となって広がるので音の定位もとても自然で、ざわざわした音の震えがしっかり伝わってくる。とくに弱音部の美しさは特筆ものだ。音の印象とはまた少し異なるが、いちばん驚いたのは、高S/Nでレンジも広いのに小音量でも最弱音の動きがちゃんと聞こえること。たとえば、①は最弱音を基準として音楽をつくっているような演奏で、ppの部分などほんとうに聞こえるか聞こえないかの音で演奏するのが特徴的でもあるのだが、それがちゃんとした輪郭をもって聞こえるのだ。第2楽章の冒頭のコントラバスとチェロのピツィカート(楽譜の指定はmpなのだが、演奏はppp)が、こんなにはっきりと聞こえたことがない。――高域がまだいくらかつまり気味だったり、ここ一番の表現力の強さなどが不足しているように感じられるのは、たぶん確実にエージングが進んでいたいことによるものだろう。
とにかく、この音の粒子の細かさと空気感、反応の高さは替えがたい魅力だと思う。昨晩、khimairaさんに簡単な感想を送ったら、こうしたことの多く部部分は「トランスというデバイスのS/Nの高さと群遅延特性の良さ(低域から高域まで、変換速度にバラつきが無く一様に音を出す能力)によるもの」ではないかというお返事をいただいた。「群遅延特性」というテクニカルタームは初めて聞いたが、なるほど「鈍い」と感じる音の正体はこいつが鈍いわけだ。
khimairaさんによれば、トランスのエージングには50時間以上(全開になるまでは100時間)かかり、ある瞬間に急激に音に実体感が加わるという。たしかに、いまの段階では音色の変化が少し淡白な部分があるし、音の芯が多少弱い印象があるが、これに実体感が加わると、どんな音、音楽を聴かせてくれるのか、とても楽しみだ。
ところで、死亡したST490Aだが、SN75179よりも数段音がいいらしい。目の前にして聴けなかったのは悔しいので、SOPでもいいから手に入れようと思う。DigKeyで手に入るらしいが、送料高いんだよなぁ。入会金みたいなのもあるみたいだし。――と書いていたら、platycerusさんからコメント到着。「LTC490使ってみます?」「SN75179を捨てたくなること請け合い」とまでいわれて、「いいえ遠慮します」なんて言えるわけないじゃない(笑 でも、ST490AとLTC490ってどう違うのかなぁ。
追伸
先日、脚立から落ちて歯欠けになった部分は、友人の歯医者で抜けた歯を差し歯代わりに入れてもらいました。さすがに歯欠けのまま年越しはしたくないしね。コメント欄やメールでご心配いただいた方々、どうもありがとうございます。――でも、当日すぐに痛みが取れた右顎の付け根が、昨日あたりから少し痛むようになりました。医者ももう休みだから、年始の診療に行ってきます。