スピーカの間隔

オーディオについてあれこれ気にしはじめたごく初期段階で、スピーカのセッティングでけっこう致命的なポカをやっている。DALIのRoyal Towerはリアバスレフであることもあって、セッティングによっては低音の締まりがなくなって音の定位も帯域のバランスも崩れてしまう。ただ、このスピーカはセッティングにあまりこだわらなくても、独特の艶と音場感が得られるために、オーディオショップのいい加減なセッティングで聴いてもそこそこ鳴ってはくれる。逆にいえば、セッティングで追い込んでいけば、それだけ応えてくれる潜在力が高いということだ。――というわけで、部屋の中でのスピーカの位置や内振りの角度などをあれこれ試した結果、うちの場合は部屋の対角線を挟んでスピーカをセッティングして、内振り角度を強めにするというのがいちばんいい結果だったのでいまでも基本的にはそうしている。この配置のもっとも良かったところは、奥行き側と上下の音場感がうまく再現されることで、俺のようにオーケストラ音楽を聴くことが多いと、この感覚は何ものにも替えがたい魅力になる。問題は、スピーカの間隔の空け方である。
スピーカの間隔を決める際にあれこれ悩んだ末、奥行き側の音の展開をうまく出すためにかなり間隔を広くとり、左右の広がりが自然になるように内振り角度を調節した結果、左右の間隔230cm、それを底辺とする聴取位置までの距離が180-190cmで落ち着いた。つい先日、スピーカの間隔を底辺とする聴取位置の高さの比が2:1.5であるのがもっともいいということを、サンバレーの大橋さんが書いていたが、図らずもほぼその比率だったわけである。――ここまではいい。というか、俺自身もかなり完璧なセッティングであるとおもった。オーディオ使用など考慮に入れていない部屋だから、床は一般住宅用の普通のフローリングなので、安く仕入れた非オーディオ用大理石ボードをスピーカのベースにしている、というところまでも問題はない。問題は、16-17ミリほどの薄めの大理石なので、防振対策をしたほうがよかろうということで石の裏側にブチルゴムを貼りつめてしまったことである。バカである。こいつがこれほど強い粘着力を持っていたとは…。
スピーカの間隔を微調整できない不便はこれまであまり感じなかったのだが、最近になって、部屋の構造からくる定在波によって左右の音のバランスが違うことが気になり出した。これは以前から感じていたのだが、こういうのは一度気になり出すと音楽に集中できないのでほんとうに困る。そこで思いきって、定在波が悪さをしている左のスピーカの位置を内側にずらしてみた。
明らかに定在波の影響は減って左右のバランスはよくなる。だが、その一方で内振り角度をいくら調整してみても左右の音の広がりは狭いし、音の奥行き感が俺にはまったく不満だ。残響もうまく広がってくれない。ただ、この辺りはあくまでも個人的な好みが優先されている。このほうが、ずっと音が前に出てくるし、音のメリハリもはっきりするので、こちらのほうを好む人も多いはずだ。残響やホールトーンがうまく聴取位置の後ろまで広がってくれるならば(という2chオーディオには至難なポイントがクリアできるならば)、俺も納得できると思う。――しかし、ここであきらめて、定在波を我慢して好みのバランスをとるか、バランスを犠牲にするかという選択で落ち着いてしまうのは悔しいので、この週末はセッティングにかなりの時間を費やし、結果、かなり満足できるスウィート・スポットが見つかった。定在波の影響が大幅に減ったおかげで楽器の定位もほとんど問題ないし、奥行き側と上下の展開も満足、左右の広がりはわずかに犠牲にはなったが、それも満足できるレヴェルには充分に達している。
結果としては、左のスピーカを40cmほど内側に寄せ、右のスピーカを10cm外側にずらしたので、左右の間隔は205cmとなり、内振りこれまでよりも少し弱めて、法線が聴取位置のわずかに手前で交差する角度となった。面白かったのは、この間隔に近くなるに従って、1cm-2cmの移動がずいぶん音の印象を左右したこと。ある間隔で音がダンゴになったかと思うと、2cmずらすと突然視界が開けたようになったり、音の粒だちがきれいにそろったりする。そしてそこからまた1cm同じ方向にずらしたりすると、また音が濁ったりダンゴになったりする。不思議なものである(*)。
ただ、問題は、左のスピーカのベースが仮置きの大理石の形状も色も左右でそろっていないことと、左スピーカの位置を大きくずらしたことによって、ブチルゴムで床に張り付いた元の大理石ボードが移動不可能なまま床に鎮座していることである。当然、奥さんには大不評である。

奥さんの話が出たところでなんだが、先日の話の続きを書く機会を逸している。そろそろ書かないとな。

(*)こんな数字を参考にする人はまずいないと思うが、あくまでのこれはうちの部屋の環境での話である。