リゲティ追悼

 リゲティの訃報を知った。http://www.gyoergy-ligeti.de/
 先日、彼の「レクイエム」と「アトモスフェール」「管楽のためのバガテル」を聴いたばかりだったので、はからずもそれが彼自身に向けるレクイエムになってしまった。60年代のクラスター音楽の時代からネオ・ロマンティシズムの時代に一時傾倒するも、生涯にわたってポリリズム様式を追求してきたリゲティは、理論家であるよりもさまざまな様式や理論を受容して、それを独自に変容させるのがうまい人だった。その諧謔性を含む音楽は、晦渋になりがちな現代音楽のなかでは特異な存在で、現代音楽ファン以外にも多くの聴衆を獲得していた。
 リゲティという作曲家を知らなくとも、キューブリックの「2001年宇宙の旅」や「シャイニング」で使われていた音楽といえばかなりの人がその音を思い出せるという意味では、とても幸福な作曲家だった。そんな作曲家なめったにいない。ここを訪れてくれる方々は、クラシックを聴かれるひとでも現代音楽アレルギーの方が多いけれど、リゲティの作風の多様さに触れると、すこしは現代音楽の見え方も変わってくるんじゃないかと密かにおもうのだ。
 リンクしたSchottの写真のような気さくな人柄と、どもりぎみにユーモアを交えて話す語り口を、かれの音楽とともに思い出している。