初めての訪問

 ひさびさのオーディオネタ。 
 先日の日曜日、Counterpointのアンプについていろいろと情報を提供していただいているvinさんにお誘いいただいて、事務所近くの都内某所にお住まいのハイエンドユーザのY氏宅にお邪魔させていただいた。Michael Elliottが設計した最高グレードのプリアンプOpus oneをお持ちということで、その音を聴かせていただくのが目的。オーディオ目当てに人様のお宅を訪問するのは初めてのことだ。Opus oneは$15,000という高額製品であるうえに生産台数がひじょうに少ないために、日本には数台しかないらしい(画像をリンクしようにもヒットしないくらい少ない)。左右独立電源で電源部だけで立派なモノパワーアンプと見まごうばかりの威容にとにかく圧倒される。
 その際のレポートはvinさんが以下のblogで書かれている。http://ariajp.cocolog-nifty.com/free_discussion/
 そこでも書かれているように、諸事情によりシステム全容のネット公開はペンディング状態なのだが、vinさんのレポートを読めばその一部はわかる。以下の記述もvinさんのところで公開されている製品以外のことは一応伏せておく。
 とにかく、これまで俺が個人宅で聴いたシステムでは間違いなくいちばん高額なシステムだ。国内発売時の定価で換算すればOpus oneは約250万だし、スピーカはペア500万。これだけで俺のメイン・システム全体の軽く6,7倍はする勘定だ。
 聴かせていただいた音は、紛れもないハイエンドの音で、さすがに情報量は多いし、聴覚上のダイナミックレンジはとてつもなく広い。まず耳を引いたのは、聞えてくる音が紛れもないCounterpointのサウンドだということ。自分のSA-5.1といまはお蔵入りしてしまっているSA-8以外の音は聴いたことはないのだが、音自らがそれが生み出す空間に浸透していくというか、声高に存在を主張しないが、それでいて音楽が表現すべき要素をすべて備えている点では共通している。だからというべきか、しかしながらというべきか、システム全体への浸透力は聴覚上もひじょうに明確に伝わってくる。もちろん、Opus oneとSA-5.1ではグレードの違いからくる肌理の濃やかさは比較しようはないが、それでもビロードの艶のような音の感触は共通している。
 Y氏のスピーカはB社のNだが(vinさんのblogを見ればわかりますね/笑)、意外にもそんなプリの傾向にぴったりと寄り添っている。以外と言ったのはじつは、俺は一般にB社のスピーカの音は苦手なのだ。個人的にはあんな微粒子だけでできてるような実体のない音じゃ、音楽を楽しむことができない。あれをクラシック向きだなんていってる人間は生演奏で何を聴いているのかとすらいいたくなる。向き不向きじゃなくて、空気の振動を音楽と勘違いしてないか? とは言い過ぎかもしれないが。しかしNという頭文字のスピーカを聴いて、かなり認識を改めた。微細な粒子に実体的な質感が加わっているのだ。さすがにこのクラスにもなれば好み以外の欠点は見当たらないのは当たり前なのかもしれないが。―とにかく、Opus oneとの相性はけっして悪くないし、むしろかなりいいと思った。ただ、好みとしては、やはり俺はB社はえらばないなぁ(Y氏とは聴くジャンルが違うから、繰り返すがたんなる好みの問題だ)。
 ちょっと気になったのは、ヴァイオリンの高域の音がきつい感じがしたことと、オーケストラの奥行き側の広がりが少ないこと。クラシックならばもっとスピーカの左右の間隔と聴取位置の距離の比を小さくしたほうがいい結果が出るはずだ。しかし、それは聴くジャンルに依存するセッティングの問題。前者は、原因はちょっと不明。ある一定以上の高音域になると、それまで滑らかだった音の繋がりが嘘のように急に鋭く耳に突き刺さる。――だけど、これは全体の音のクオリティのなかでは小さなことなのだけど。
 
 以上が、Y氏のところで聴かせていただいた音の印象だけど、とにかくとんでもなくクオリティが高い音であるのは、ハイエンド慣れしていない俺が聴いてもあきらか。でも、正直に告白すると、俺にはここまでのハイエンドは必要ないなぁ(それ以前に買えないだろう/^^;)。それほど広くもない部屋で、ニアフィールドに近いセッティングで大音量は出さないのだから、あれこれ細かい調整を加えてここまで持ってきた自分のシステムの音で、しばらくは満足できるはずだ。ただ、聴覚上のダイナミックレンジはもっとほしいとは思うが、それはさすがにいまのシステムでは望むべくもない。